ノリックのWGP500初参戦!衝撃の1994年鈴鹿グランプリ!

#56 Norick Abe HONDA NSR500 (1994)

ノリックの1994年
ノリックこと阿部典史(あべ のりふみ)は、国際A級ルーキーイヤーだった昨年1993年に、突如彗星の如く現れ、GP500の全日本チャンピオンに輝いた選手である。

その時、弱冠18歳。

長髪を掻き上げながら笑うその顔は、ただのあどけない少年そのものに見えた。

全日本選手権最高峰のGP500クラスはその年を最期に開催中止が決定され、ノリックは最期のGP500全日本チャンピオンとなったのである。

全日本選手権の最高峰クラスは、市販車改造のスーパーバイクシリーズに変わることになり、全日本選手権を走る限り、以降GP500のマシンに乗る機会を奪われたのである。

1戦限りの夢

しかし。

前年度の全日本GP500チャンピオン阿部典史は、1度限りの機会を得ることとなる。

それが、自国開催の世界選手権。
世界グランプリGP500へのワイルドカードでの参戦である。

場所は鈴鹿。

相手は世界の名選手たち。

舞台は整った。

いつかは世界グランプリ、しかもそこではチャンピオン争いをしたいんだと語っていたノリックには、恐らく、自身をアピールする為の、最初で最期のチャンスに思えたことだろう。

1994年の鈴鹿日本GP(GP-1 500ccクラス予選)

ポールポジションはヤマハYZR500でコースレコードを叩き出したルカ・カダローラ。
世界グランプリでは、GP125で1回、GP250で2回、合計3回の世界チャンピオン経験者。今年は500cc2年目でいよいよ脂が乗ってきた選手だ。

2番手にはホンダのエース、ミック・ドゥーハンNSR500。
怪我も癒え、いよいよ世界チャンピオンに王手か? チャンピオン候補大本命のライダー。

3番手に、前年の世界チャンピオン、ケビン・シュワンツRGV-Γ500。
1988年に前年チャンプ、ワイン・ガードナーを打ち負かしてから、ここ鈴鹿では過去3勝、負けてもなお必ず表彰台には登る強さを見せているライダーだ。

予選結果
予選1列目
1. 2’08″336 #5 ルカ・カダローラ YAMAHA
2. 2’08″995 #4 ミック・ドゥーハン HONDA 
3. 2’09″335 #1 ケビン・シュワンツ SUZUKI
4. 2’09″752 #57 本間利彦 YAMAHA
 
予選2列目
5. 2’09″810 #17 アルベルト・プーチ HONDA
6. 2’09″871 #7 伊藤真一 HONDA
7. 2’10″465 #56 阿部典史 HONDA
8. 2’10″581 #6 アレッシャンドレ・バロス SUZUKI
 
予選3列目
9. 2’11″020 #11 ジョン・コシンスキー CAGIVA
10. 2’11″044 #8 アレックス・クリビーレ HONDA
11. 2’11″078 #3 ダリル・ビーティー YAMAHA
12. 2’11″440 #50 ニール・マッケンジー ROC

決勝出走は30台。3列目までを記載

予選を見て思う

コースレコードを更新したのは、ルカ・カダローラとミック・ドゥーハン。

2分8秒台に載せてきた。

そして鈴鹿で強さを見せる、前年世界チャンピオンのケビン・シュワンツ。

フロントローの最後の枠にはヤマハ本間利彦。

日本人ライダーに着目すると、注目は、この本間と2列目の伊藤真一(前年から世界GPフル参戦)に集まった。

昨年の全日本チャンプとは言え、まだまだルーキーという扱いのノリックに注目する人は、あまり居なかったのではないでしょうか?

マシンも、まるでツギハギのようなマシンはホンダのNSR500。

昨年のブルーフォックスカラーではなく、ミスタードーナツが始めた「ミスター飲茶(ヤムチャ)」のロゴの赤いカウルに緑のホイール。

マシンも型落ちで、実際に部品を寄せ集めて組み上げたNSR500だったそうです。

GP-1 500ccクラス決勝

前日の雨もあがり、路面はほぼドライ。

決勝はポールポジションのルカ・カダローラがロケットスタートでホールショット。

クリビーレが上手い。

3クラス制覇に燃える、イタリアのイケメンは31歳。

ミックドゥーハンはGP6年目、26歳。

ケビン・シュワンツ30歳。

対するノリックは18歳。

スタートは6、7番手に見えたノリックだったが、ヘアピン立ち上がりでは5位。

スプーンを立ち上がりコントロールライン通過時には3位ドゥーハンの後をピタリとつける4位。

2周目には3位。

3周目のヘアピン突っ込み、シケイン進入ともにシュワンツに刺させない!

4周目に入るとついにドゥーハンを刺して2位浮上!

すぐに抜き返されるものの、ドゥーハン、阿部、シュワンツの順でラップを重ねる。

5周目、130Rでスリップからシュワンツがノリックを抜き去る。

シュワンツはファステストラップ2分10秒010を記録。

1コーナーで抜き返そうと並ぶノリック。

シュワンツとドゥーハンが抜きつ抜かれつ。

ドゥーハン、シュワンツ、ノリック。少し離れて伊藤が、トップのカダローラとの差を詰めていく。

6周目終わって、シュワンツと伊藤が9秒台に突入!

8周目に突入。
ノリックを含む3人が、いよいよトップのカダローラを射程距離内に捉えた。

決勝レースハイライト

ペースを上げて猛追していた4人が、ペースの落ちたL・カダローラを抜き去り、トップ集団を形成。

シュワンツ、ドゥーハン、ノリック、伊藤の順で周回。

トップから4位伊藤真一までの差は2秒0

15周目、トップにシュワンツ。ノリック、ドゥーハン、伊藤の順。

周回遅れが目立つ中、シュワンツにピタリとつけたノリックがスプーン入り口でシュワンツを抜く!

メインストレートではシュワンツと肘が当たりそうなサイドバイサイド!

しかしその横をドゥーハンNSRが2台共に抜き去ってゆく。

しかし、シケインの進入はシュワンツが神がかっている。

17周目、残りは5週。

シュワンツ、ドゥーハン、ノリック、伊藤の順だが、ペースの落ちた阿部に、ペースを上げた伊藤が追いすがる。

21周で戦うこのレース。

ラストスパートで逃げ切ろうとペースを上げたシュワンツ!

シュワンツは17周目に9秒439のファステストラップ!

他の3台を引き離しにかかる。

18周目にヘアピンを立ち上がった後、阿部が再び2位浮上。

裏ストレートではドゥーハンNSRが爆速で抜き返す。

ぐちゃぐちゃに滑るマシンで阿部がシケインに飛び込んで、2番手の座を引き戻す!

ドゥーハンというよりは、シュワンツを狙った走りに見える。

そして19周目に突入した直後、運命の1コーナー進入!

大きなブラックマークを残して、阿部が画面から消えました。

そう、この走りが、ちょうどグランプリライダーを目指していた(後のレジェンド)ヴァレンティーノ・ロッシ選手の目にとまり、興奮させたのです。

レースの締めくくり

ケビン・シュワンツはやはり凄くて、
17周目 2’09″439
18周目 2’09″883
19周目 2’09″740

と立て続けに2分9秒台で走り続け、2位のドゥーハンに3秒674のアドバンテージを築いている。

貴重な#1のシュワンツ。

差を3秒946に広げて最終ラップへ。

競り合いの強さは半端ないですね。

そして大きくウィリーしてフィニッシュ!

ケビン・シュワンツ選手、鈴鹿では、3年ぶり4回目の優勝を果たしました。

伊藤真一が3位で2戦連続の表彰台

本間利彦がアレックス・バロス5位を競いながらの6位でした。

伝説となったレース

海外から見たら、日本の無名のルーキーが、いきなり、百戦錬磨のワーススライダーたちと互角に渡り合ったとんでもない衝撃的なレースだったことでしょう。

マシンのゼッケンで、前の年のランキングが分かったりするので、56番みたいな大きなゼッケンがトップ争いをしているだけで衝撃でした。

実際に、このレースで2位になったミック・ドゥーハン選手もこの年の世界チャンピオンになりましたし、そういった、世界チャンピオンたちと日本人ライダー、しかもルーキーが、互角に渡り合ったのですから、衝撃と興奮は凄まじいものでした。

バレンティーノ・ロッシ選手もそのころ、毎日このレースのビデオを、18周目が終わるまでを、必ず観てから通学していたというのですから。

そしてこのノリックに憧れて、部屋にはノリックのポスターを貼り、自らを「ろっしふみ」と呼ぶに至ったというのですから驚きです。

まさにレジェンド。

もう、彼の走りが観られないことが残念でなりません。

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